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かなしいごかい
悲しい誤解
豊島 与志雄
「女性改造」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,139 字 · 23 页
病気にだって罹るかも知れない。久子という名前まで、なにか儚ない感じがする。彼女の存在が既に淋しく頼りないとすれば、子供だってそうだ。あの子の今日の弁当のお惣菜には、何がはいっていたのであろうか。
「田代君、なにをにやにやしてるんだい。」
笠原がふいに声をかけたので、私はぴくりとした。次に、彼の言葉の意味が通じると、私は狼狽した。にやにやなんかしていなかったはずだ。人間の存在の頼りなさ、血のつながりの悲しさ、そういうことをしみじみ味わっていたのだ。それから、姉の子の弁当のお惣菜のこと。私の今日の弁当には、蒲鉾にすずめ焼がはいっており、それは昨夜の酒の肴の残りものではあるが、うまかった。もしも、そのささやかな一時の幸福について、無意識にも私が笑みを浮かべていたとすれば、何たることだろう。
私は眉をしかめて振り向いた。そして、こんどは意識して、憂欝な笑みを浮かべた。
「原子爆弾なんか、どうだっていいさ。僕には何の関係もない。」
私はぼんやり、原子爆弾の話を笠原たちがしているのを、耳に入れていた。ソヴィエトが原子爆弾を所有していることが世界に公表され、国際政局に新たな波紋が描かれてきた、そういう新聞記事が一般の話題になってる時だ。