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おろかなおとこのはなし

愚かな男の話

岡本 かの子

「キング」講談社、1936(昭和11)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,390 字 · 3 页

青空文庫

男は考えた。こう一々研ぎ直すのでは手数がかかってやり切れない。一遍に幾度分も研いどいてやろう。そこで男は二三日がかりで庖丁ばかり研ぎにかかった。

かくて、庖丁の刃金は研ぎ減り、駱駝は暑気に腐ってしまった」

○

「やはり愚な男があった。腹が減っていたので有り合せの煎餅をつまんでは食べた。一枚食べ、二枚食べして行って七枚目の煎餅を半分食べたとき、彼の腹はちょうど一ぱいになったのを感じた。男は考えた、腹をくちくしたのは此の七枚目の半分であるのだ。さすれば前に食べた六枚の煎餅は無駄というものである。それからというものは、この男は腹が減って煎餅を食べるときには、先ず煎餅を取って数えた。一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚、そしてこれ等の六枚の煎餅は数えただけで食わないのである。彼は七枚目に当った煎餅を口へ持って行き半分だけ食った。そしてそれだけでは一向腹がくちくならないのを如何にも不思議そうに考え込んだ」(百喩経より)