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あいか

愛か

李 光洙

「白金学報 第一九号」1909(明治42)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,381 字 · 11 页

青空文庫

しかしその実彼は幸福ではなかった、彼は漸く寂寞孤独の念を萠して来た、日々何十人何百人という人に逢うけれども一人も彼に友たる人は無かった、それがために彼は歎いた。泣いた。悲哀の種類多しといえども、友を有せぬほどの悲哀はないとは彼の悲哀観であった。

彼は夢中になって友を探した、けれども彼に来るものは一人もなかった。往々無いでもなかったが一人も彼に満足を与える者はなかった、すなわち彼の胸中を聴いてくれる人はなかった。彼の渇はますます激しく、苦はますますその度を高めるのみである。十六億あまりの人類のうち吾が胸を聴いてくれる人はなきかと彼は歎声を吐いた。かくて彼はますます弱くなり、ますます沈欝になって、話好の彼も漸く口をきかないようになり、人と交わることさえ厭うようになって来たのである。彼は日記帳に彼の胸中を説いて、やっと自慰めたくらいである。彼は断念めようと思った、しかしこれは彼のなし得るところではなかった。そこに無限の苦は存するのだ。かくて二歳は流れた。

今年の一月彼はある運動会で一少年を見た、その時のその少年の顔には愛の色漲り、眼には天使の笑浮んでいた、彼は恍惚として暫く吾を忘れ、彼の胸中に燃ゆる焔に油を注いだのである。