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あいよあい

愛よ、愛

岡本 かの子

岡本かの子『愛よ、愛』。同一底本的分册已合并为一书。收入:愛よ愛、現代若き女性気質集、女性の不平とよろこび、時代色、異性に対する感覚を洗練せよ、女性崇拝、山茶花、桃のある風景、病房にたわむ花、異国食餌抄、巴里の秋、売春婦リゼット、巴里のむす子へ、新時代女性問答、家庭愛増進術、良人教育十四種、岡本一平論、かの女の朝。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,138 字 · 99 页

青空文庫

三人が三人、巴里に居るわけに行きませんから、せめて息子だけ、巴里って恋人に添わせて置くのを心遣りに、私達は日本って母国へ帰って来ましたの。何も息子を偉くしようとか、世間へ出そうとか、そんな欲でやっとくんでもありません。言わば息子をあすこに置いとくことは、息子に離れてる辛い気持ちとやりとりの私達の命がけの贅沢なんですよ。…………てね。

かの女は自分がそう言って居るうちに、それを自分に言ってきかせて居るような気持になってしまった。

――ねえパパ、こんな処へ朝っから来て、こんなこと言ったりしてることも私の抒情的世界ってことになるんでしょうね。

――ああ、当分、君の抒情的世界の探索で賑かなことだろうよ。

逸作は、息子の手紙を畳んだりほぐしたりしながら比較的実際的な眼付きを足下の一処へ寄せて居た。逸作は息子に次に送る可なりの費用の胸算用をして居るのであろう。逸作の手の端ではじけている息子の手紙のドームという仏蘭西文字の刷ってあるレターペーパーをかの女はちらと眼にすると、それがモンパルナッスの大きなキャフェで、其処に息子と仲好しの女達も沢山居て、かの女もその女達が可愛くて暇さえあれば出掛けて行って紙つぶてを投げ合って遊んだことを懐しく想い出した。