轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるおんなのしゅき
或る女の手記
豊島 与志雄
「婦人倶楽部」1920(大正9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,447 字 · 37 页
私の疑懼の念はまた高まってきた。
私はその頃、眠れないことがよくあった。夜中にふと眼を覚して、夜明け近くまで夢現の境に彷徨することがあった。そういう時、よく気味悪い夢を見た。夢の中で彼と追っかけっこをすることもあった。……然しそれらの事は、夜が明けると共にさっぱり拭い去られて、私は秋晴れの外光の中に、清々しい自分を見出すのであった。それなのに意外にも、ああいうことが俄に起ったのである。
十一月十八日、その日私は学校の帰りに、お寺の前でまた彼と出逢った。彼は御門の柱によりかかって、何かしきりに考え込んでいるらしく、私が通りかかっても、胸に垂れた頭を上げなかった。私はすたすたとその前を通り過ぎた。そして二三十歩行った時、後ろから彼がついてくるのを感じた。前に見た二度の幻と全く同じだった。が私はその時、不思議にも別段恐ろしいと思う念は起らなかった。首垂れながら後をつけてくる彼の姿が――私の心に映ってる彼の姿が、一寸可笑しく思われた。私は素知らぬ風を装って、心では彼の姿を見守りながら、普通の足取りで家へ帰っていった。私の家の門には観音開きの扉がついていて、玄関と門との間が砂利を敷いた狭い前庭になっていた。