轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
三二
定子の事から考えると自分には案外子運があるのかもしれないとも思った。しかし前の懐妊の経験と今度の徴候とはいろいろな点で全く違ったものだった。
一月の末になって木村からははたして金を送って来た。葉子は倉地が潤沢につけ届けする金よりもこの金を使う事にむしろ心安さを覚えた。葉子はすぐ思いきった散財をしてみたい誘惑に駆り立てられた。
ある日当たりのいい日に倉地とさし向かいで酒を飲んでいると苔香園のほうから藪うぐいすのなく声が聞こえた。葉子は軽く酒ほてりのした顔をあげて倉地を見やりながら、耳ではうぐいすのなき続けるのを注意した。
「春が来ますわ」
「早いもんだな」
「どこかへ行きましょうか」
「まだ寒いよ」
「そうねえ……組合のほうは」
「うむあれが片づいたら出かけようわい。いいかげんくさくさしおった」
そういって倉地はさもめんどうそうに杯の酒を一煽りにあおりつけた。
葉子はすぐその仕事がうまく運んでいないのを感づいた。それにしてもあの毎月の多額な金はどこから来るのだろう。そうちらっと思いながら素早く話を他にそらした。
三二
それは二月初旬のある日の昼ごろだった。からっと晴れた朝の天気に引きかえて、朝日がしばらく東向きの窓にさす間もなく、空は薄曇りに曇って西風がゴウゴウと杉森にあたって物すごい音を立て始めた。