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あるりょうにんのざんぱい

或良人の惨敗

佐々木 邦

「面白倶楽部」1926(大正15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,067 字 · 15 页

青空文庫

何一つ正式に相談をかけて戴いたことがないんですから」

「それじゃ相談する。今度丈け貸すから承知しておくれ」

「私は兄さんに御用立てするのを彼れ是れ申しませんよ。今までだって一度でも苦情らしいことを申しましたか? 唯あなたが何でも私を差置いて独断でなさるから腹が立つのです」

「俺はそんなに独断かね?」

「独断ですとも。御自分勝手ですわ。昨日のお手紙だって私が訊かなければ黙っていなさるじゃありませんか? 同じ御用立てるにしても、実は斯うだと一言仰有って下されば、私だって何んなに心持が好いか知れませんわ」

と夫人の訴えるところは至極道理だった。

「それは俺だって有りもしない金を絞り取られるのは感服しない。自分でもクサ/\することをお前の耳に入れたくないんだ。お前に相談しないで断ったこともあるよ」

「断ったって承知なさらないでしょう?」

「それは然うさ。精々値切るぐらいのところさ。それだものだから、この頃は駈引を覚えて三四割掛値を言って来る。しかし旅先で困っているものを打っ棄っても置けないじゃないか? 俺は何も兄の不始末を匿す気じゃない。そんな他人行儀はしない積りだ。