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てがみ
手紙
久生 十蘭
「小説と読物」1949(昭和24)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,158 字 · 30 页
五日ほど後、村上さんはトレホの村長のところからスコールに濡れて帰ってきて、病気になりました。熱の高いとき、村上さんは私の顔がわかりませんでした。私は寝台の下にいて、二十五日の間、自分の手を氷で冷やしては、村上さんの足を涼しくしてあげました。村上さんがすこしよくなってからは、毎日、抱いてお湯に入れてあげました。
十月のある朝、村上さんが免職されたという噂がアンボン中にひろがりました。私はソエのパッサールでききました。煙草屋のクット・ライは、村上さんが部隊のお金を費いすぎたので、その罰で、ニューギニアのケクワの部隊へやられるのだといいました。私が帰ってそういいますと、村上さんは、
「お前などの知ったことでない」とたいへん怒りましたが、しばらくすると、
「四郎、こっちへ来い。おれは考えるのだが、おれは日本人をやめて、インドネシアになってもいいな。お前たちのように気楽に暮したくなった。お前の妹でも嫁さんに貰ってさ」
私はつぎの言葉を待っていましたが、村上さんそれっきり黙ってしまったので、気の変らないうちに話をきめておくほうがいいと思って、
「スクレニがあなたの嫁さんになれば、あなたと私は兄弟になるのですか」