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てがみ
手紙
久生 十蘭
「小説と読物」1949(昭和24)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,158 字 · 30 页
、ビルマ、ジャワ、比島、モロタイ、仏印などの機関基地を中心にして、南方各地で活躍したということだが、つまるところ、重治もその一人だったというわけである。
通信隊長であろうと、機関員であろうと、死んでしまった以上、名目などはどちらでもかまうことはない。シンガポールで死のうと、濠洲で死のうと、残されたものの上に及ぼす影響に、さしたるちがいがあるわけでもない。重治の最後のようすが知れたのは、娘にしても老生にしても非常な満足であり、マリハツ・シロウというひとの親切は、謝するにあまりあるのであるけれども、老生が強くうたれたのは、未知のインドネシア人の重治にたいするたとえようもなき深い情誼についてであった。
当然の次第とはいえ、文章はたどたどしく、措辞もすこぶる意外なものが多く、意味の通じかねるところもあるが、いたるところにホロリとするような愛情の泉がひそめられ、自分の生涯に、かくも懇篤な、誠実極まる美しい手紙に接することは再びはあるまいと、思わず嘆声を洩したくらいであった。それは全文片仮名の手のつけようもないもので、適当に漢字と句読を施したが、介意して、文章は毀損せざらんことを期した。