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ごうもんのはなし

拷問の話

岡本 綺堂

「新小説」1924(大正13)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,111 字 · 16 页

青空文庫

吉五郎は凱旋の将軍のように歓迎された。

十一月十一日、第二十回の拷問が行われて、かれは笞打のほかに石八枚を抱かされた。つづいて十二月二日には海老責に逢った。しかもかれが依然として屈伏しないこと勿論であった。それでこの年も未決のままに過ぎてしまって、吉五郎は牢内で第二回の春を迎えた。あくれば天保七の申年である。二月十三日に第二十二回の吟味が開かれて、かれは笞打と石九枚の拷問にかかった。三月二日には笞打と石十枚、四月四日には笞打と石九枚、それもみな無効に終った。かれは自ら作った拷問十八回のレコードを破って、更に二十四回の新レコードを作ったのであった。

四月十一日、奉行所ではいよいよ最後の手段として、かれに対して釣り責を行うことになった。まえにもいう通り、今までの笞打、石抱き、海老責は正式にいう拷問ではない。今度の釣し責が真の拷問である。牢問二十四回にしてなお屈伏しない罪人に対して、奉行所では初めて真の拷問を加うることになったのである。釣り責は青細引で罪人の両手をうしろに縛って、地上より三寸六分の高さまで釣りあげるのである。法は頗る簡単のようであるが、責めらるる者に取ってはこれが最大の苦痛であるという。