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しどうものがたり

指導物語

上田 広

或る国鉄機関士の述懐

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,687 字 · 35 页

青空文庫

代りに私は、肩を並べて見入っている二人に、ちっとも気にかけていない自分を示すつもりで、思ったより好い成績じゃないか、と笑った。それが飛んでもない口火となってしまったのである。佐川二等兵はいざ知らず、私の機関助士はたいへんな皮肉に受け取ったらしい。あんな運転振りでは火焚きも石炭の節約どこじゃありませんからね、と云うのである。私は二度びっくりし、そういう意味じゃないんだ、とおっかぶせるように云ってやったが、すでにあとの祭で、機関助士はいっそう真剣な顔つきになり、人差指で統計表の私の名を突っついて指しながらいささかがっかりしてるんです、どうせ悪くなるとは思っていたけれど、こんなに落っこちるとは夢にも思ってませんでしたよ、と云うのであった。私にもそのようなものの云いかたをしなければいられない、機関助士の気持がわからないでもなかったが、その為に若し佐川二等兵の技術的な進歩に影響があったら一大事だと考え、ちっとぐらいよけい使ってもいいじゃないか、なにも故意にやってるわけでもないし、これから段々よくしていけばいいんだ、とたしなめるつもりで幾らか激しい口調で云った。