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たんていしょうせつのなぞ
探偵小説の「謎」
江戸川 乱歩
1 奇矯な着想「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年10月号<br>2 意外な犯人「週刊朝日 推理小説特集号」朝日新聞社、1955(昭和30)年10月10日<br>3 兇器としての氷「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1952(昭和27)年3月復刊号<br>4 異様な兇器「読切小説集」テラス社、1953(昭和28)年11月増刊<br>6 隠し方のトリック「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年8月号<br>7 プロバビリティーの犯罪「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1954(昭和29)年2月号<br>8 顔のない死体「探偵倶楽部」共栄社、1952(昭和27)年5月号<br>9 変身願望「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年2月特大号<br>10 異様な犯罪動機「宝石」岩谷書店、1950(昭和25)年8―11月号<br>11 探偵小説に現われた犯罪心理「文化人の科学」、1947(昭和22)年3月号<br>12 暗号記法の種類「宝石」、1953(昭和28)年9・10月号「類別トリック集成」の一部<br>13 魔術と探偵小説「新青年」、1946(昭和21)年10月号<br>14 明治の指紋小説「宝石」、1950(昭和25)年12月号<br>15 原始法医学書と探偵小説「自警」、1951(昭和26)年9月号<br>16 スリルの説「ぷろふいる」、1935(昭和10)年12月号<br>「類別トリック集成」目次「続幻影城」早川書房、1954(昭和29)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 页
スリルのスリルである。
ドストエフスキーのスリルについて語り出せば際限がない。すぐ宙で浮かんでくるものだけでも五つや六つではない。殺人者ラスコーリニコフが、人通りのはげしい道路で、突然ひざまずいて大地に接吻するという、恐怖ではないが、しかし非常にはげしい一種のスリル、「永遠の良人」の人物が、自分を殺すかも知れない男と、同じ部屋で眠る場面のいく通りものスリル、「カラマゾフ」のドミトリが、いいなずけの女から侮蔑的な態度で三千ルーブルを受け取り、それをほかの女と使い果たしてしまったかのごとく見せかけながら、実は半額の千五百ルーブルを着物の襟にぬいつけてかくしていた、そのことがどんな人殺しよりも窃盗よりも恥辱だという気持、しかしついにそれをうちあける場面の描写、あれには実に深い心理的恐怖が含まれている。私はあれを一つのスリルとして感じる。
別の作者をいえば、アンドレエフの出世作といわれる短篇に好例がある。上田敏博士が訳していられたと思うが、私は二十年ほど前、ストランド誌の英訳ではじめて読んで、いまでも忘れられないほどの印象を受ける。筋は、痴情の復讐から、ある女とその愛人を殺したうえ、しかも処罰をまぬがれるために、狂人をよそおい、さて目的をはたして、精神病院に入れられてから、自分はにせの狂人のつもりでいるがしかし