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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

が、駅舎から全市街の大半が焼かれていた。眼のわるい支店長、ひろ子、新らしい道伴れ、三人は、人群にまじって荒板づくりの仮事務所の前に立った。姫路駅では正確な故障箇所の告知板さえ出してなかった。いつ恢復する見込なのか。そんなことを知る必要もないという駅員の態度である。

「君たち、商売なのにそんなだらしないことってあるものか。鉄道電話は何のためにあるんだ」

「電話なんてあらへんよ、焼けしもうて。――」

頓馬! というような眼付をして、新しい道づれをジロジロ眺めながら若い駅員は平然と答えた。

「もうとっくに、電信不通や!」

これでも文句があるか、というように答えて、雨の降っている地べたへ煙草の吸殼を投げすてた。

「――鉄道ラジオ一つないんだから……。外へ出ましょう、こうしていたってきりがない」

新しい伴れが、警察に宿屋を斡旋させようと提案した。数百人の旅客が、白鷺城跡の見える駅前の仮小舎にかたまって途方にくれた。

焼跡の大通りを、大分歩いて市庁の建物のあるところへ出た。ジープや大型トラックが、雨水をしぶかせて、城下町の通りを疾駆している。M・P本部の玄関で若い白ヘルメットが、金色の長い睫毛を伏せるようにして日本のヒメジの十月の雨脚を眺めていた。