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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

「案外いいですよ、さっぱりして」

支店長は、うたがわしそうに小コップをとりあげ、日本酒ののみかたで、チビリと流し込んだ。

「何や……こう……えろうカーッとしますなあ」

「そうですか、馴れるといいもんだがな」

一方は、ブランデーをのむように、パッと口の中へあけるようにのんだ。

「――奥さんいかがです」

「私は無調法なんです、本当に駄目」

新しい道づれは、名を云えば大抵のものは知っているらしい大阪のキャバレーの持ち主であった。ひろ子は、文楽以外に大阪をよく知らず、そのキャバレーがどんなに大規模なのかも知らなかった。慶大かどこかを出たその男は、惰勢とか卑俗とかいう字句をつかって自分の商売を客観的に、時には自嘲的に語りながら、やはりとことんのところではそれにひかれ、そういう面での敏腕をたのしんでもいるらしかった。

表の三畳間に、一人永逗留の女客がいた。ひろ子は、そのひとの布団に入れて貰って、朝まで熟睡した。

部屋へ帰って見て、ひろ子は思わず笑い出した。

一枚のきたない掛布団をしき、二人の男が、行儀よく並んで仰向いて、パチパチ天井を見ている。上に一枚かかっているのも薄い掛布団だが、それは二人にかかるように横にしてあった。