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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
「なんだい、こりゃ!」
わざわざ列をはなれてそばへよってゆく男たちもあった。
すると、白開襟シャツに国防色のズボン、巻ゲートルの三十がらみの大柄の男が、あっち向きにひろ子のついわきに佇んでいたのが、不意に、大声をあげて、板でも叩くように二言三言まるで意味のわからないことを叫んだ。そして、手にもっている竹のステッキをあげて、一人一人と土色の小人の背中の荷をたたいた。荷をたたかれた泥きのこのような小人は、鞭を感じた驢馬の仔のように歩調をはやめ、ほとんど駈け出したそうにした。が、途方もない荷は彼等の足に重しを加えている。小人らはチンパンジーの腕を一層ふりたくり、首だけを前にのばし、その伸した垢だらけの細頸に太くうねうねと静脈のふくれ出ているのがひろ子の目にとまった。
数百、千余の視線が、このおそろしい小人の一隊の上に注がれた。あとからあとから同じような二列縦隊がつづいた。やっと列が行きすぎたとき、
「――少年兵だ」
一言そう呟く声がした。
ひろ子は、体が震え出すような気がした。少年兵。――少年兵。どうぞ一人も途中で死ぬことがないように。
爽やかな午後の街道を暫く暗くして小人群が通りすぎたとき、支店長は、全くその光景には心付かなかったらしく、交渉に亢奮した顔色で列に戻って来た。