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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
戦争にひき出され不具にまでされた上、愛する確信さえ失うとしたら、人の一生として、きりこまざかれかたがひどすぎる。剛毅を。剛毅を。ひろ子は、それが湧き出ずる清水ならば手にすくって、その人の口から注ぎこみたいように感じた。
もう小一時間で京都に着くというとき、片脚の人は、ふと改った口調になって、向い側の「教・総」に云った。
「自分は、京都で下車いたしますが、一つ何か、記念になるお言葉を頂きたいと思います」
腕組みをしていた「教・総」はそう云われた途端、ほんのりとその顔を赧らめた。それは、能面になっているときの顔とはまるでちがって、好人物らしい、はにかんだ表情があった。
「自重して暮して下さい」
考えながらおだやかに、そう云った。
「そして、勉強する。む、勉強する。何より勉強が大切だ」
「ありがとうございます」
列車はその時小さい丘の裾をめぐって走っていた。列車のまきおこす突風で、野草がゆられ、萩の花がなびくのが見えた。
やがて又、片脚の人が言をついだ。
「どういうもんでしょう。こういう情勢になりましたから国体論というような本は、みんな、かくしておかなけりゃいけないもんでしょうか」