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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
ここで、「教・総」とその若い従卒とが降りた。白絹は、わざわざ車窓から首を出して、焼けのこってはいるが、薄暗いプラットフォームを見ていた。やがてその首をひっこめて座席へ腰をおろしながら、
「大勢迎えに来ていますよ、なかなか大したものらしい。将官級ですナ」
そして声をおとし、
「大部責任の重い地位らしくて、自決の決意を洩して居られました」
白絹が、その軍人に対して万事ひかえめに応対していたこころもちの原因が、わかった。
「さて、ここまではいいとして、これからがことですよ、山陽線は実にひどうござんすからね、先ずおくれずに行くことはないんだから」
ズボンのポケットから時計を出し、ゆっくり見てから、どこやら解放されたという表情で、大きく、のびのびと伸びをした。
ひろ子の乗っている車室は電燈の故障で、大阪駅を出てからは、真暗闇のまま疾走した。
折々通過する小駅の灯かげが暗い車内にサッとさしこむとき、混雑した荷物のでこぼこや人影が黒く浮き上った。わきの窓はこわれていてガラスがなかった。
重吉の母の登代が暮している町は、瀬戸内海に沿って、もとは山陽線本線がずっと迂回して通っていた場所にあった。