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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

その素木の積木が、その年の九月初め日本橋の三越の玩具部に売っていた唯一の子供たちの遊び道具であった。子供たちに積木してやっているわきの座布団の上に、裾まわし分だけの紺秩父の布地と、ひろ子が母の丸帯を切って来た綾織の布地が、出しっぱなしてあった。ひろ子が東北の田舎からリュックに入れて背負って来た土産のしるしは、こんなものであった。

五時頃、この家から国民学校に通勤している従妹のしげのが帰って来た。しげのが、白い木綿のブラウスに西日をうけながら、裏の新道を小走りにかけ下り台所口へ入って来て、ただいまと云い終るか終らないに、土間にいたつや子が、挨拶にこたえず、

「しげのさん、お風呂の加減みにゃ」

と云いつけた。子供らと遊びながらひろ子は、それをきくと何となしびっくりした。障子のかげで、しげのの姿は見えない。けれども、そういうのが毎日のことになっているらしく、しげのは黙って向う座と呼ばれる小部屋へ荷物をおいてから、また裏へまわって行った。

裏山の茂った杉の梢に、溶けるような美しい斜光がさしていた。ほど近い駅の構内で、転轍した貨車がリズミカルな響を立ててぶつかり合いながら接続されている音が、海に近い西国の小さい町の澄んだ大空をわたってきこえて来る。