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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

彼は更に四月六日静子の母を参考人として放火事件の取調を行い同日広島県下から召喚した貞の父を調べたが、いずれも今までに判明した事実を裏書きしたに過ぎなかった。

事件に稍自信を得て来た古我判事は翌四月七日、去月二十日一回の訊問をしたきり打ち棄てゝ置いた支倉の第二回の訊問を行った。

所が支倉の態度はガラリと変っていた。

支倉喜平は予審判事の第一回の取調べの三月二十日から第二回の取調べの四月七日まで凡そ二十日間東京監獄に監禁せられている間に何を考えたのであろうか。その二十日間に古我予審判事は或いは家宅捜索をなし、或いは実地検証をなし、十指に余る証人を召喚し、中には遙々広島県下から呼び寄せたものさえあるが、苦心肝胆を砕いて漸く核心に触れる事が出来たので、今日第二回の訊問をなすべく支倉を予審廷に呼び出したのであるが、支倉は前回の悄然として面さえも挙げ得なかった態度に比し、今日はその特徴のある真黒な顔をすっくと上げて、大きな眼玉をギロリと光らして、平然として判事に対したのだった。

古我判事はジロリと支倉の意外な態度に注意の眼を向けながら徐ろに口を切った。

問 被告の所に此離婚証書があったが、それはいつ作ったものか。