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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
被告の都合や、弁護人の都合や、裁判所の都合で公判は延期に延期を重ねた。その中に一年は夢のように経って終ったけれども、裁判は少しも埒が開かない。
裁判を遷延さす事はそれが弁護人の策略であるかのように神戸牧師には思えて仕方がなかった。裁判が延びるにつれて、被告の犯罪事実は調書に止まってはいるものゝ、だん/\印象が薄れて来る。証人も倦み疲れ、判官も熱心が欠けて来る。その間に乗じて弁護人が巧に働けば遂には証拠不十分と云う事に漕ぎつける事も出来るだろう。それだけに裁判を延ばされると云う事は、いつも証人として立たなければならない神戸牧師に取っては、苦痛の度が益※(二の字点、1-2-22)大きくなるのである。
五年も六年も前の出来事について、而も度々繰返した一つの証言を、又事新しく強いられるのは苦痛でなくてなんであろう。所が神戸牧師の苦痛はそれだけに止まらなかった。
支倉は控訴後も無論未決監に入れられていたが、彼が獄中から毎日と云って好い程――実際は月に四、五回だったかも知れないが、牧師にはそれが毎日と思えるのだった――彼に当てゝ手紙を送った。それには極って、