轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

あるかなきかのそよ風が軒に釣り古した風鈴に忍びやかな音を伝えて、簾越しにスーッと、汗ばんだ単衣の肌を冷かに撫でて行った。

神戸牧師はふと今朝程来た裁判所からの召喚状の事を思い出した。彼の眉にはみる/\深い皺が寄った。

牧師の頭には不愉快な思出がアリ/\と浮かんで来た。

大正六年の冬、それはもう一昨年の事になるが、初めて神楽坂署に呼出されて、支倉喜平の恐ろしい罪状の数々を聞き、彼の自白に立会ってから、昨年の夏第一審の終結となるまで、何回となく証人として法廷に立たされた、苦しい思い出は終生忘れる事が出来ない。

去年の夏七月第一審が終結した翌朝、彼の妻は不安とも安心ともつかない浮かない顔をして彼に云った。

「支倉はとうとう死刑になりましたね」

「うん」

牧師も浮かない顔をして答えた。

「控訴するでしょうか」

「無論するだろう」

「じゃ、又証人に呼び出されるのでしょうか」

「無論、呼び出されるだろう」

妻は言葉を切って夫の顔を見た。夫は妻の情なさそうな顔を見た。妻は明さまの溜息を、夫は腹の中で私かに溜息をついたのだった。

支倉は果して控訴した。審理は又蒸し返しとなった。