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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

如何折返し何れの御返事を願います」

こう云う風な嫌がらせの手紙で金品を強請された人は外にある事と思われる。

さて大正十一年六月七日、第十二回公判は裁判長以下成規の判官の下に、能勢氏他二、三の弁護人、特別弁護人として木藤救世軍士官が控えて、物々しく開かれた。この公判には神楽坂署の署員が証人として出廷する事になっているので、支倉の運命を決する重大な裁判と云わねばならぬ。彼は例の自ら筆記した大部の書類を携えて被告席に控えていた。

第一に出廷したのは石子刑事だった。支倉事件に関係した神楽坂署員のうち大島司法主任は既に支倉の訊問半にして斃れたが、当時老練の誉高く事件に活躍した根岸刑事は先年物故した。石子刑事は署長を除くと唯一の現存主要人物なので、裁判長の訊問も鋭く、殊に能勢弁護人の追究は物凄い程で、石子刑事は殆ど一人で神楽坂署の非難を引受けて終った形だった。

彼は能勢氏から支倉拘引の前後の事情、自白に至るまでの経路につき勢い鋭く問い詰められた。石子刑事は白面に些か興奮の色を見せながらテキパキと答えた。死体発掘の模様から、髑髏の件になると能勢氏の面は愈※(二の字点、1-2-22)熱して来た。