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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

それに先生の娘さんがシャンだなんて騒いでいたのでしょう。支倉へ行ってからも行動は大小となく探り出して来るのですよ」

岸本の噂の聞覚えや、推測によるとその娘は支倉に犯されて忌まわしい病気になったのではないかと云うのだった。

「同級生にひどい奴がありましてね、そいつはある名士の息子なんですが、少し低能で二十いくつかで四年級だったのです。そいつが時間中に小林先生に娘さんの御病気は何ですかと大きな声で聞きましてね、その時、小林先生の今にも泣き出しそうに口を歪めた、何とも名状すべからざる気の毒な顔は今でも覚えています」

「ふーん、いや好い事を知らして呉れた」

石子刑事は再び腕を組んで、深く考えに陥ち込んだ。

岸本青年は所在なさに細君に話しかけた。

「奥さん、何か面白い話はありませんか」

「えゝ、別にありませんね。私もね、今の話の支倉と云う人から威かされているんですよ」

「えっ、どうして?」

「始中終脅迫状みたいなものが来るんですよ」

きみ子は眉をひそめながら、

「今にお前の宅へお礼に行くから待って居ろなんて、そりゃ凄い事が書いてあるんです」

「へえー、ひどい奴だなあ」

岸本は呆れたように云った。