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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
「ですから私毎日ビク/\してるのよ」
きみ子は淋しそうな顔をした。
石子は二人の話声が耳に這入らないようにじっと考え込んでいた。
三年前の女中の失踪。誘拐されたか、自殺したか、それとも殺されたか、いずれにしても死んだのなら死体が出そうなものだ。親の身として似寄りの死体が出たら、きっと見に行った事であろう。死体の出ないのは未だ生きているのか。
疑問の怪物支倉の女中の謎の失踪。こりゃ愈※(二の字点、1-2-22)むずかしくなって来たぞ。
石子刑事は思わずうーむと唸った。
岸本から三年前に支倉方の女中が行方不明になった事を聞いた翌晩、石子刑事は女中の父親である城北中学の教師小林氏の自宅を訪ねた。
面長の頬骨の出た生活に疲れたような小林氏は、乱雑に古ぼけた書物の積上げてある壁の落ちた床の間を背にして、眼をしばたゝきながら、ポツリ/\と話した。
「仰せの通りあれが行方不明になりましたのは丁度三年前です。この頃はもう諦めましてな、成る可く思い出さないようにしているのです。
貞子は長女です。兄が一人ありますが、之はお恥かしい次第ですが、すっかりグレて終いましてな、結局あなた方の御厄介になるのではないかと心配しています。