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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
汚いのなんのって、珍しく汚いのですから、そのお積りで」
二階裏の一室は立てば忽ち頭を打つような窮屈さだった。剥出しの曲りくねった垂木には一寸程も埃が積もっていた。
「支倉の奴ですかい」
石子刑事が切り出すと彼は忽ち大声を出した。
「旦那、あんな悪党はありませんぜ。あれが耶蘇の説教師だていから驚きまさあ」
「支倉にいた親類の娘さんが行方不明になったそうだね」
「えゝ、あの野郎め、未だやっと十六になった許りの姪を手籠めにしやがって、挙句の果にどっかへ誘き出して殺して終いやがったんでさあ」
定次郎の放言には石子刑事も驚いた。
「オイ/\、声が大きいぜ、滅多な事を云うなよ」
「へえ、すみません。実はわっちの方にも之と云う手証がねえもんですから、仰せの通り大きな声は出せねえのです。少しでも証拠がありゃ、今まで黙っちゃいないのです。
一体兄貴が意気地がねえもんだから、現在の娘をあんな眼に遭わされて、運命だ、いや荒立てゝは身の恥だなんて、中学校の先生なんてものはみんなあんなもんですかねえ。だから、あっしゃ見ちゃいられねえのです。姪を元の身体にして返せとまあ、旦那、談判に出かけたもんです。