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しなまいのふくろ
支那米の袋
夢野 久作
「新青年」1929(昭和4)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,357 字 · 50 页
妾のまわりにはまだ、いくつもいくつも支那米の袋が転がっているらしいんですもの……。おまけに、それをどうかしに来たらしい荒くれ男が三四人、平気で冗談を云い合いながら葉巻を吹かしているじゃないの……あんまり恐ろしい、不思議な事なので、妾は、あと先を考える事も何も出来やしなかったわ。ただ眼をまん丸に見開いて鼻っ先に被さっている袋の粗い目を凝視ながら、両方のお乳を痛いほどギュッと掴んでいたわ……夢じゃないかしらと思って……。
でも、それは夢じゃなかったの……そうして歯を喰い締めて、一心に耳を澄ましていると、ゴットンゴットンという器械の音の切れ目切れ目に、ドド――ンドド――ンっていう浪の音が、どこからか響いて来るじゃないの。……ええ……おおかた外の女達も妾とおんなじにビックリして小さくなっていたんでしょう。呼吸をする音も聞えない位シンとしていたようよ。
そうしたら又その中に、その葉巻を持っているらしい男が、一としきりスパスパと音を立てて吸い立てながら、こんな事を云い出したの。
「待て待て。片づける前に一ツ宣告をしてやろうじゃねえか。あんまり勿体ねえから」
「バカ……止せったら……一文にもならねえ事を……」