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しなまいのふくろ

支那米の袋

夢野 久作

「新青年」1929(昭和4)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,357 字 · 50 页

青空文庫

……それからもう一人……この艦に乗っている俺たちの司令官を怨みたけあ怨むがいいってんだ。……イヤ……事によると、その司令官だけを怨むのが本筋かも知れないがね……どっちにしても、お前さん達のいい人や、そんな連中に頼まれた俺達を怨んじゃいけないよ。いいかい……という訳はこうなんだ。先刻ヤングさんが司令官に、お前さん達を亜米利加まで連れてっていいかって伺いを立ててみたら、亜米利加の軍艦の中には、食料品より以外に肉類を一切置いちゃイケナイってえ規則になっているんだッてさあ……だからね……折角ここまで来ているのをホントにお気の毒でしようがないけど、ちょうど風も追い手のようだから、お前さん達はその袋のまんま、海を泳いで浦塩の方へ……」

ここまでその男が饒舌って来たら、あとは聞えなくなっちゃったの。だって妾のまわりに転がっている十いくつの袋の中から、千切れるような金切声が一どきに飛び出して、ドタンバタンとノタ打ちまわる音がし始めたんですもの。中には聞いたような声がいくつもあったようだけど、そんな時に誰が誰だかわかりやしないわ。ただ耳が潰れるほどキーキーピーピー云うだけですもの。