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かいぜんはあたまから

改善は頭から

丘 浅次郎

「活人」1926(大正15)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,833 字 · 8 页

青空文庫

その他、三度の食事や衣服の世話に追われて、主婦の頭は死ぬまで進歩せず、生活を簡単にしたいという考えさえ容易に起らぬ。人の家を訪ねるには、かならず菓子を持って行き、先方から来るときには、ちょうどそれと同じ値段の菓子を持って来て返す。有名な人の旅行には、送迎の人たちで停車場がいっぱいになり、真に用事のある急ぎの客は、出ることも入ることもできぬ。宿屋へ泊ればいくら茶代をやってよいやら分らず、ぐずぐず考えているととんでもない冷遇を受ける。息子が兵隊に行くと、何本も旗を立ててお祭り式に送られるから、止むを得ず、その人々に酒を飲まして思わぬ借金が殖える。まだ、数えたら幾つあるか知れぬが、これらは誰も、皆、気の付くことで、およそ、生活改善が唱えられる場合には、これらの箇条を掲げぬことはない。しかるに、方々で何回も唱えられたにかかわらず、今日もなお依然として風俗が少しも改まらぬのは何故であろう。

私の考えによると、これはまったく頭が変らぬからである。頭が変らぬ以上は、いかに声を大きくして生活改善を叫んでみたところで、けっして生活改善の実はあがらぬ。改善とは文字のとおり、改めて善くすることであるから、馬鹿げ切った迷信さえも思い切って排斥し得ないような頭では、何の改善もできるはずがない。