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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

途中壱升壱円の米を二升買う。

外に朝日五ツ。

干しうどんのくず五拾銭買う。

お母さん達が、どんなに喜こんでくれるだろう。じりじりした暑さの中に、日傘のない私は、長い青年の影をふんで歩いた。

「よくもこんなに焼けたもんだ!」

私は二升の米を肩を替えながら脊負って歩くので、はつか鼠くさい体臭がムンムンして厭だった。

「すいとんでも食べましょうか。」

「私おそくなるから止しますわ。」

青年は長い事立ち止って汗をふいていたが、洋傘をくるくるまわすと、それを私に突き出して云った。

「これで五十銭借して下さい。」

私は伽話的な青年の行動に好ましい微笑を送った。そして気もちよく桃色の五拾銭札を二枚出して青年の手にのせてやった。

「貴方お腹がすいてたんですね……。」

「ハッ…………。」青年はほがらかに哄笑した。

「地震って素的だな!」

十二社までおくってあげると云う、青年を無理に断わって、私はテクテク電車道を歩いた。

あんなに美しかった女性達が、たった二三日のうちに、みんな灰っぽくなって、桃色の蹴出しは、今は用のない花である。

十二社についた時は、日暮れだった。四里はあるだろう。