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ほうろうき(しょしゅつ)
放浪記(初出)
林 芙美子
「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页
酒屋の二階
私は窓をいっぱいあけて、上野の鐘を聞いた。晩は寿司でも食べよう。
酒屋の二階
十二月×日
「飯田がね、鏝でなぐったのよ……厭になってしまう……。」
飛びついて来て、まあ芙美子さんよく来たわ! と云ってくれるのを楽しみにしていた私は、長い事待って、暗い露路からショボショボ出て来たたい子さんを見ると、自動車や、行李や、時ちゃんが、非常に重荷になって、来なければよかったんじゃないかと思えた。
「どうしましょうね、今さらあのカフェーに逆もどりも出来ないし、少し廻って来ましょうか、飯田さんも、私に会うのバツが悪るいでしょうから……。」
「えゝ、ではそうしてね。」
私は運転手の吉さんに行李をかついでもらうと、酒屋の裏口の薬局みたいな上りばなに転がしてもらって、今度は軽々と、時ちゃんと二人で自動車に乗った。
「吉さん! 上野へ連れて行っておくれよ。」
時ちゃんは、ぶざまな行李がなくなったので、キッキッとはしゃぎながら、私の両手を振った。
「芙美ちゃん! 大丈夫かしら、たい子さんって人、貴女の親友にしちゃあ、随分冷たい人ね、泊めてくれるかしら……。」
「大丈夫よ、あの人はあんな人だから、気にかけないでもいゝのよ。