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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

高村さんの作で、有島さんが持っていらっしたとか、部屋は実に雑然と、古本屋の観があった。

談話取りが、談話がとれなくて、油汗を流していると、秋田さんは二三枚すらすらと手を入れて下すった。

お寿司を戴く。来客数人あり。

暮れたのでおくって戴く。

赤い月が墓地に出ていた。灯の湧いた街ではシュッシュッ氷を削る音がする。

「僕は散歩が好きです。」

秋田氏は楽し気にコツコツ靴を鳴らしている。

「あそこがすゞらん!」

舞台の様なカフェー、変ったマダムだって誰かに聞いた。

秋田氏は銀座へ。

私は何か書きたい興奮で、沈黙って江戸川の方へ歩いて行った。

七月×日

階下の旦那さんが二日程国へ行って来ますと云って、二階へ後の事を頼みに今朝上って来たのに、社から帰えってみると、隣のミシンの娘さんが、帯をときかけている私を襖の裂けめから招いた。

「あのね一寸!」

向うから底声なので、私もそっといざりよると、

「随分ひどいのよ、下の奥さん外の男と酒呑んでるのよ……。」

「いゝじぁないの、お客さんかも知れないじゃないんですか。」

「だって、十八やそこいらの女が、あんなにデレデレして夫以外の男と酒呑めるか知ら……。