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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

時ちゃんはピシャリと障子を締めた。

敷蒲団はたいさんと私と一緒の時代のが、たいさんが小堀さんとこへお嫁に行ったので残っていた。

あの人は鍋も、包丁も敷蒲団も置いて行ってしまった。

一番なつかしく、一番厭な思い出の残った本郷の酒屋の二階を思い出した、同居の軍人上りや、二階でおしめを洗ったその妻君や、人のいゝ酒屋の夫婦や。用が片づいたら、あの頃の日記でも出して読もう――。

「どうしたかしらたい子さん!」

「今度こそ幸福になったでしょう。小堀さん、とても、ガンジョウな人だそうだから、誰が来ても負けないわ……。」

「いつか遊びに連れて行ってね。」

「あゝ……。」

二人は、下の叔母さんから借りた上蒲団をかぶって日記をつけた。

一、拾参円の内より

茶ブ台      壱円。

箱火鉢      壱円。

シクラメン一鉢  卅五銭。

飯茶わん     弐拾銭  二箇。

吸物わん     参拾銭  二箇。

ワサビヅケ    五銭。

沢庵       拾壱銭。

箸        五銭   五人前。

茶呑道具 盆つき 壱円拾銭。

桃太郎の蓋物   拾五銭。

皿        弐拾銭  二枚。

間代日割り    六円。