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ほうろう
放浪
織田 作之助
「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,399 字 · 47 页
智慧を振りまいていると、髪の毛の長い男がいきなり傍へ寄って来て、あんさんとは今日こんお初にござんす、野郎若輩ながら軒下三寸を借り受けましての仁儀失礼さんにござんすと場違いの仁儀でわざとらしいはったりを掛けて来た。順平が真蒼になってふるえていると女給が、いきなり、高峰さん煙草買いましょう。そう云って順平の雑魚場行きのでかい財布をとり出して、あけた。男は覗いてみて、にわかに打って変って、えらい大きな財布でんナと顔中皺だらけに笑い出し、まるで酔っぱらったようにぐにゃぐにゃした。男はオイチョカブの北田といい、千日前界隈で顔の売れたでん公であった。
その夜オイチョカブの北田にそそのかされて、新世界のある家の二階で四五人のでん公と博打をした。インケツ、ニゾ、サンタ、シスン、ゴケ、ロッポー、ナキネ、オイチョ、カブ、ニゲなどと読み方も教わり、気の無い張り方をすると、「質屋の外に荷が降り」とカブが出来、金になった。生まれてはじめてほのぼのとした勝利感を覚え、何かしら自信に胸の血が温った。が、続けて張っている内に結局はあり金を全部とられて了い、むろんインチキだった。