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ぶんがくとちほうせい

文学と地方性

宮本 百合子

「文芸」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,647 字 · 11 页

青空文庫

例えば佐々木一夫氏という農村の生活を書いている若い作家の実際を傍からみても、その困難の複雑さを教えられた。農業そのものの方法から日本では極度に人力が要求されていて、その上現代の社会経済に対抗して生計を立ててゆくためにはあらゆる方法で多角な経営が必要となって来る。主人の労力は昼夜のわかちなく求められて、農繁期に机に向うことなどは思いもよらない。冬ごもりの期間にどうやら継続的に文学の仕事にたずさわることが出来るとして、ずっと辺鄙な地方での生活は文化的な雰囲気というものに欠けていて、その点でのいい刺戟を求める心持の激しさは、やはり東京へ、という思いに駆り立てる。

これまで、誰も彼も、文学への立志と上京とを結びつけて行動されて来たのは、ここの動機からであったと思える。都会のもっている文化と地方の生活の中にある文化との落差は、はたで一口に云えないニュアンスをもって深刻に存在している。都会の文化の中に人間の精神を強めるものと殺戮するものとがあるとおり、地方の文化のなかには別の形でその根づよさその伝統の力で、人間の精神を生かしまた殺すものがあるのは事実であろう。