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ぶんがくとせいかつ
文学と生活
宮本 百合子
「入門文学講座 第三巻」新日本文学会、1950(昭和25)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 17,476 字 · 34 页
いつか佐多稲子が小説を書く人の心がまえとして、意識というと階級意識と限って考えられる傾きがあるけれども、階級についての意識ばかりでなく、生活のうちにふれてくるすべてのことに意識をもたなければならないという味わいの深い言葉を書いているのを読んだことがある。実感の豊かで、強い内容は、稲子さんが云っているとおり、あらゆる場合めざめている意識をとおしてその人のうちにつみかさねられてゆく。
意識するということは、生理的に知覚すること――ただある音がきこえた、ただあることがみえた、そして、きこえた音、見えたものごとから人間の神経がそれに応じる一定の反射作用をおこした、ということではない。意識するということは、知覚されたものの質や意味までをこめて生活感情の中に積極的にくみとるということである。そして心というものは、宙に浮いたものでなくて、かならずその人の生活とともにあるものだ。生活は社会関係の中にその人がどんな立場でおいこまれているかということに基礎をおいているから、したがって生活感情としての美の意識までも自らちがいをもってくる。知覚されたものに対しての評価と判断がある。