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ぶんがくについて
文学について
宮本 百合子
「文化評論」1967(昭和42)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,949 字 · 14 页
小林多喜二は満足であろうという文章をよまれたでしょう。
同じような文句は一九三三年二月小林多喜二が築地警察署で拷問の果に殺されたとき、板垣直子がかきました。小林多喜二を殺したのは共産党であるというデマゴギーは、このようにして十六年後もまだ或る人々の観念の中にあるのです。共産党とプロレタリア文学運動に関係してわたしが人間性を失い同時に文学の能力を殺された、或は失ったということは、わたし一人に対する誹謗としてだけでなく、共産党そのものへの誹謗として言われつづけたものです。そのためにわたしは、過去十二年間、僅に三年と数ヵ月しかなかった執筆期間に自身の階級的文学者としての未熟さを克服し、文学そのものによっていかにたたかい、語るべきかを発見しようとしてきました。そして、日本の敗北、前衛の解放は、わたしという一人の作家から口かせをはずしたばかりでなく、実に十数年間圧えられてきた人民の声そのものから口かせをはずしたのです。
獄中十八年が書かれ、それがよまれるということは、書かれるべき獄外の人民の苦悩とたたかいの十八年があるということにほかなりません。それは小説に書かれ、人民の歴史のうちに形象化されるに価しないものでしょうか。