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ぶんめいしのきょうくん

文明史の教訓

大隈 重信

「早稻田學報 第百八十七號」早稻田大學校友會、1910(明治43)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,532 字 · 7 页

青空文庫

文明の弊か人の弊か

文明の勃興するころには、それに伴う弊害が何時でもこれに裏切りしていることを知らねばならぬ。しかのみならず、同じ文明が民族に対して同じ効果を持つということも、我輩は疑問と思う。国民に文明批判の力を要するというのは、この点から言うのである。日本も今世界の文明に対して自由に門戸を開いている。日本の為す仕事、考える思想、すべてのものが世界から独立することなしに動かなければならぬ。日本は既に大きな刺撃の前に、裸体で飛び出しているという姿である。極端なる個人主義、極端なる社会主義、極端なる平等無差別主義――これらは決して他国のものではなくなっている。

文明の弊か人の弊か

かかる弊害は文明自らの弊であろうか、それを受け入れる人々の誤りであろうか。これがまず研究の主要目標である。これはなかなかの大問題で、容易に断定を下すことの出来ぬものである。ある哲学者がある時代にある誤った思想を発表する時、その説には非常な誤謬があるに拘わらず、ある時代の間に相応にポピュラーになるというようなことのないとも限らぬ。もしそういうことがあるとすると、それが後代の人々を非常に苦しめることになる。