轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

となんせんせい

斗南先生

中島 敦

「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,262 字 · 44 页

青空文庫

伯父の苦しそうな寐顔を見ながら、しかし、彼は、かえって、この伯父のかつての滑稽な非常識な失策などを思い出していた。伯父が銭湯へ行ったところ、女湯とあるのを読み、そこには男湯はないものと思って、帰って来た話。また、三造の妹に、駄菓子屋へ行って、キャラメルを五円買って与えた話。そんなことを彼はゴトゴト揺られながら思い出していた。その三造の妹は二年前に四歳で死んだ。それを大変悲しんだ伯父はその時こんな詩を作った。

毎我出門挽吾衣 翁々此去復何時

今日睦児出門去 千年万年終不帰

睦子とはその妹の名である。三造には漢詩の巧拙は分らなかった。従って伯父の詩で記憶しているのもほとんどないのであるが、今、次のようなのがあったのを、ひょっと思い出した。その冗談めいた自嘲の調子が彼の注意を惹いたものであろうか。

悪詩悪筆 自欺欺人 億千万劫 不免蛇身

口の中で、しばらくこれを繰返しながら、三造は自然に不快な寒けを感じてきた。何故か知らぬが、詩の全体の意味からはまるで遊離した「不免蛇身」という言葉だけが、三造を妙におびやかしたのである。彼自身も、この伯父のように、一生何ら為すなく、自嘲の中に終らねばならぬかも知れぬというような予感からではなかった。