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りょうりのだいいっぽ

料理の第一歩

北大路 魯山人

「独歩」1953(昭和28)年

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,573 字 · 4 页

青空文庫

それでも、なにもしないで、女房が部屋のすみの棚においていったりんごをかじった。

その男の頭が、少しふくれたようだ。

「そうだそうだ、果樹園を作ろう。新鮮なくだものを木からとってすぐ食べることはすばらしいぞ」

でも、男はなにもしなかった。そして米びつの米をかじった。

こうしてこの男は考えてばかりいるうちに、だんだん頭が大きくなっていった。少しも働かぬので、手や足はだんだん小さくなっていった。家の中にも、もう米もくだものもなんにも食べるものがなくなった。それでも男は考えることを止めずに、考え続けた。だんだん男の頭は大きくなって、手足や胴は小さくなっていった。

とうとう食べるものがなくなると、男は小さくなった自分の足を食べてしまった。でも、男は考えを止めなかったので、いよいよ頭が大きくなっていった。食べるものがないので、自分の胴を食べ、手を食べてしまった。

おしまいに、この男はもう食べるものがなくなって、考える頭と食べる口だけになってしまった。この男の考えることは、一つも間違ったことはなかった。ただ一つも行わなかっただけであった。世の中には、こんな頭の大きい男がたくさんいる。