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りょうりのだいいっぽ

料理の第一歩

北大路 魯山人

「独歩」1953(昭和28)年

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,573 字 · 4 页

青空文庫

一人の男がいた。女房が去った後は独りで暮らしていた。その男はこんなことを考えた。

「まず土地を見つけることだ。よく肥えた土地を。そしてそこへ野菜を植えるのだ。毎日野菜が食べられるぞ」

けれど、男は土地を探すことをしなかった。家の中でごろごろしていた。それでも、おなかがすいてくるので、パンをかじった。男はあくる日、こんなことを考えた。

「野菜もいいが、牛を飼うのだな。そして、豚も飼うのだな。おいしい肉が食べられるぞ」

でも、男はなにもせずにごろごろしていた。おなかがすいたので残りのパンをかじっていた。その男の頭が、なんだか少しふくれているようだ。

あくる日、男は考えた。

「女房がいなくとも、ちゃんとこうして食べていける。待て待て、自分で料理だってできるぞ。そう動きまわらなくとも、手をのばせば用事ができるような便利な台所をつくることだ。清潔な明るい台所を」

だが、男は実際はなにもしなかった。おなかがへってきたので、パンを食べようと思ったが、もうパンがなくなったので、米びつの米を生のままかじって考えた。

「待て待て、台所もいいが、それより先に、働きやすいような、身軽な服装をこしらえることが第一だな」