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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

と、一言残して、山へ去った者である。同時に、自身の菩提山の城までも、叔父へ譲って、無禄の一隠士になった者だ。その際、

(そうか、半兵衛は、隠居して山へかくれたか。あの病身では、奉公も気うといのであろう)

と、彼の辞表を認めて、秋の破れ扇ほども惜しまなかったのは、誰でもない、龍興自身であった。

半兵衛が去ったからには、半兵衛の舅も、一族の者も、自然、登城の足も遠ざかるであろうと、むしろさばさばした顔で、忘れ果てていた龍興だった。

とはいえ――彼は忠臣だから、かつてのことはともかく、来る筈である。来なければならないと、彼は不平に思うのだった。

「もう一度、使いを立ててみよ。まだ、余に対して、何か怒っているのかもしれぬ」

無駄――とは思ったが、重臣たちは、四度か五度目の使者を、栗原山へ向けた。

使者は、悄然と帰って来て、

「ようやく、お眼にはかかりましたが、半兵衛様には、御催促の書面を拝して、一言のお答えも、それにはございませぬ。ただ、はらはらと落涙なされて……世にも御不愍な太守ではある――と溜息をもらされたきりでござりました」

と、復命した。

それを聞いて、龍興は、