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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

竿頭一瓢

竿頭一瓢

南は厚見、加納の平野から、西は合渡、鏡島など長良川の流脈へわたって、織田軍の攻進は、日夜進んでいた。

八月の炎暑だった。

夜は夜で、焼きたてる町や村々の火が、空を焦がしていた。

破竹の勢い――ということば通り、はやくも月の七日頃には、敵の本城地、稲葉山へ近く迫った。

その配置を見ると、

先鋒は案内者として

木下藤吉郎の兵約一千。

二番

柴田権六勝家、森三左衛門の手兵およそ二千余。

三番

池田勝三郎、佐々内蔵助、前田孫四郎利家の二千人。――軍監は梁田出羽守。

これに次いでは、信長の本陣をめぐって、尾州の精鋭が旗下として三千。

後陣は、佐久間信盛が、二千余人をひきいる。

総人数一万余という。

一万という兵力は、織田信長として、この時、初めて持った大兵なのである。

彼の覚悟のほどもそれで分る。尾張として、これは名実共に、挙国一致の動員だった。ここに敗れれば、尾張もなく織田もないのである。

しかも、ここまでは、攻め入ったが、稲葉山城の天嶮に迫ると、戦いは進まなかった。連日、苦戦に落ちた。

自然の要害がものをいいだして来た。それに斎藤家三代に仕えた強豪も多い。