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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
03 第三分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页
――で、彼はなおさら、藤吉郎の領土下が、そうでないのに一驚を喫したのである。
ここでは、城主と領民と、甲冑の人間と鍬をもっている人間とが、正しく一つ血につながっている相だった。
「やりおるなあ。彼も」
馬上でつぶやいた。
光秀も、それを眼に見た。
そして、さっき城下で会った、風采のあがらない一人物を思いうかべていた。
伊勢境の戦雲は、その援軍が着いた頃から、俄然、戦況は激しくなった。
しかし、北畠一族の抗戦力には侮り難いものがあった。池田勝三郎の考えていたとおり、彼の力に底のふかい根強さがあった。
二月ほどは過ぎた。
その間も、援軍は南下したが、四月の半ばとなると、信長から洲股へ書が飛んで、
――伊勢に赴け。
との命が、彼にも下った。
計らずも、先に行った旧友や新参の明智などと伍して、彼も、伊勢に戦うこととはなったのである。
「母上。――行って参ります」
出陣の朝、彼は、鎧い立った自分のすがたを、老母の室へ見せに行った。
「お健やかに」
老母も、寧子と共に、本丸の端れまで、彼を送った。
一族――もうそういえるだけの者が、彼を城門に、ひしひし待っていた。