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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

将軍家がこの信長に頼られたのは、信長に拠って、京師の奸党三好松永の徒を一掃し、失地を奪回し、室町幕府の御家統を正さんとするにあったのではおざらぬか」

「はッ」

「不肖ながら、その大任を一諾いたした以上は、信長は、疾く近日にも、その実現を考えておる。――なんで将軍家のお館など建てておる暇を持とうや。――それとも卿らは、ふたたび都へ帰って天下に立つお望みもすてて、この岐阜の景勝の地に、悠々、巨館を造営して、生涯を信長の食客となって若隠居でもしたいというお心か」

義昭の側臣らは、一言もなく、引き退った。

それからは、余り不平がましい要求もしなかった。

信長の大言は、決して偽りではないことが、間もなく証明された。

秋、八月に入ると、尾濃二ヵ国の各将へ、出兵の令が下った。

九月五日まで、約三万の軍旅は整え終った。そして七日にはもう岐阜から続々と、出発していた。

京都へ、京都へと。

――出発の前夜、城内の大宴の席で、信長は将士を激励していった。

「果てしない国内の騒乱と、群雄の割拠は、果てしない民衆の塗炭である。万民の苦しみは、一天の大君の御悩みであることはまたいうまでもない。