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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

さだめし、よこした将士は粒よりの精兵だろう」

と、敢えて咎めなかった。

果たして、一千の三河兵と、その部将松平勘四郎は、尾濃三万の中に伍して、どこの戦いに会しても、負れはとらなかった。いつも先鋒に立って、味方の道をひらき、その潔さは、家康の名を一層重からしめた。

天気は毎日、好晴だった。

三万の兵馬は、秋ばれの下に黒々とつづいた。先陣が江州の柏原に着いても、後陣はまだ垂井や赤坂を通っているほどその列は長かった。

旌旗天を覆う。

文字どおりな大行軍である。

平尾の宿をすぎ、高宮にかかった頃、前方から、

「使者でござるッ。京師の使者でござる」

と、叫びながら、馬をとばして来た三名の武将があった。

急使は、

「織田どのに拝謁したい」

と、乞い、三好義継と松永久秀の書面を携えていた。

本陣へ伝えると、信長は、

「引いて来い」

と、そのまま使者に会ったが、書面のうちにある和睦を乞うという主旨は、敵の奸計とにらんで、

「いずれ、返辞は、信長が京都へ上った節にいたす。書中にては、三好松永の両所のお心も明らかにお酌みできぬゆえ、信長が京都の陣門へお訪ねあらば、いつにても会おうとお伝えおかれよ」