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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

「何事か」

「勅使です」

「え。勅使」

信長に伝えると、信長も驚いて、あわてて駒から降りた。

万里小路中納言惟房と立入左京頼隆の二使は、やがてそれへ来て、叡慮を伝えた。信長は拝伏して、

「野人信長、弓矢をとるの他、能もございません。ただ父信秀の代より、久しく禁門の騒塵を憂い、御宸襟の安からぬ代を嘆じておりましたが、今日、僻地より上洛して、衛門の任にあたること、武門の誉れ、一族の欣び、これに如くものはありません」

と、謹んで奉答した。

三万の兵も、信長とひとつに、粛として、叡慮にこたえまつらんと無言のうちに誓った。――醍醐、山科、宇治方面から伏見にいたるまで、半日のうちに、尾濃の兵馬を見ない所はなくなった。

信長は、東福寺に陣し、義昭は東山の清水寺へはいった。

即日。

市中には布告が立った。

警備、巡察の手配は、最も迅かった。昼の番、菅谷九右衛門。夜の番、木下藤吉郎。ふたりが市中巡視の任に当った。

織田軍の一名の兵が、居酒屋で酒をのんだ。戦捷の兵は驕りやすいものである。鱈腹食べ酔って、

「これでいいだろう」

と、半分にも足らない小銭を抛って出て行った。

亭主が、追いかけて、