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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

四月の二日。

突然、招状をうけて、諸将は義昭将軍の第に会合した。評定の間の広やかな席いっぱいに、人々は、何事かと列していた。

「越前の朝倉家について」

と、信長は、その席上で初めて、この二月以来秘めていた意中を打ち割って、一同へ諮った。

「彼は、昨年来、幾たびの催促にも、将軍家の令を無視し、また、朝廷あることを知らず、皇居の御造営にも、一材の奉仕すらしておらぬ――しかも身は柳営の御相伴衆として、譜代、職にありまた、天恩に浴しながら、一門の栄華と遊惰しか思わない有様である。――その罪を糺し、誅伐の兵をひいて、信長自身、参ろうと存ずる。各※(二の字点、1-2-22)の考えはどうあるか」

信長の言は、信長個人の言とは聞えない。大義の声である。大義に対して、

「否」

と、いう者はない。

将軍家の直属のうちには、多少、朝倉家と旧交のある者もあり、暗に、庇護していた者もあるが、大義の代弁者に、

「それは理がちがう」

ともいえなかった。また、大部分の者が、信長の言下に、

「一議にも及ばず」

という賛意を率直にあらわしたので、その大勢に圧されて、口をつぐんでしまうほかはなかった。