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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
03 第三分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页
「つい、ごぶさた致しました。いつも御健勝のていで何よりです。亀一様にも、さだめしお身大きくおなりでございましょうな。御内室様も、お変りございませんか。……いやもう、十年一瞬、ここへ伺ってみると、何もかもお懐かしいものばかりで」
と、いった。
そして心から懐かしげに庭の樹々を見まわしたり、屋の棟を仰いだりして、あの石井戸の水を毎朝汲んだものだとか、そこの石の側で、あなたに叱られたことがあったとか、亀一様を背負ってよく蝉捕りをしましたとか――そんな回顧ばかり語り出した。
が――小六の容子は、そんな思い出ばなしに少しもうち溶けなかった。たえず彼の一挙一動に眼をそそいで、やがて言葉も厳つく、
「猿」
と、昔ながらに呼んで、
「汝は、侍になったのか」
と――姿を見れば知れきっていることを、敢えてたずねた。
それをまた、藤吉郎は、少しも不快らしくもせず、
「はい、ご覧の如く、まだ微禄ですが、どうやら武士の端となりました。お欣びください。――実は今日は、かたがた、それも欣んでいただこうと思い、遥々、任地の洲股の陣から、そっと駈け抜けて参ったのです」
と、いった。
小六は、苦笑して、