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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页
甘い詩を書く。
恋の詩も書く。ドイツのお母さんの詩も書く。そして詩が売れる。生田春月と云うひとはどんなおじさんかな……。ホンヤクと云う事は飯を煮なおして、焼飯にする事かな。ハイネと生田春月はどんなカンケイなのか知らないけれど、本屋の棚にハイネが生れた。ぽつんと立っている。
私は無政府主義者だ。
こんなきゅうくつな政冶なんてまっぴらごめんだ。人間と自然がたわむれて、ひねもす生殖のいとなみ……それでよいではございませんか。猫も夜々を哀れにないて歩いている。私もあんなにして男がほしいと云って歩きたい。
箒で掃きすてるほど男がいる。
婆羅門大師の半偈の経とやら、はんにゃはらみとは云わないかな……。
蛆が湧くのだ。私の躯に蛆が湧くのだ。
朝から水ばかり飲んでいる。盗人にはいる空想をする。どなたさまも戸締りに御用心。いまのところ、私は立派な無政府主義者を自任している。ひどいことをしてみせようと思っている。
夜。牛めしを食べて、ロート眼薬を買う。
(五月×日)
夜、牛込の生田長江と云うひとをたずねる。
このひとはらい病だと聞いていたけれど、そんな事はどうでもいい。