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しんさいゆうき
新西遊記
久生 十蘭
「別冊文藝春秋 第十九号新春小説集」1950(昭和25)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,654 字 · 52 页
ラマ教の教学の組織は、名目、教儀、集解という順でやっていく。智海は卅一年の五月に中座に進み、その年いっぱい観心と玄義をやり、卅二年の暮に小導師の位をとった。
そうしているうちに、毎年、陰暦九月上旬から翌年の二月の中旬まで六カ月の間、西蔵の巡礼がネパールのカトマンドゥの大塔へ参拝に来るということを聞いた。
ネパールはブータンの西隣り、西蔵と印度との間にある半独立国で、ほぼ中央のところを、東から西へ、ヒマラヤの主山脈が氷の障壁をひきめぐらしているのに、エヴェレスト、アンナプルナ、ドーラギリなど、世界で一、二の高山が五峯も集まっている削峻たる地形である。西蔵とネパールはその以前、ヒマラヤの北にあるクヒンガングリ山脈のノラの大峠を通じて交通していた。文久三年(一八六三)にモントゴメリー少佐を隊長とする英国の探検隊が潜入して以来、この道も閉鎖されてしまったということだが、それにもかかわらず、大勢の巡礼が入ってくるところをみると、抜ける道があるのにちがいない。そこで聞けば、なにかの便宜がありそうなので、翌卅三年の一月、早々退舎して、カルカッタから汽車でカトマンドゥへ行った。